伝音性難聴という言葉には、 耳の奥にある小さな空間や膜、骨たちが 少しだけ動きにくくなっている、 そんな静かな気配が宿っています。
世界には、 いつもたくさんの音が流れています。
風が木を揺らす音。 湯のみが机に触れる小さな響き。 人の声の温度。 生活の中に散らばる、 ささやかな音の粒たち。
けれど、 伝音性難聴のとき、 その音たちは 耳の入り口までは来ているのに、 奥へ進むための“扉”が少し重くなっている そんな印象があります。
耳の中には、 鼓膜や耳小骨と呼ばれる とても小さな器官が並んでいて、 音を振動として奥へ届けています。
そのどこかが、 炎症で腫れていたり、 動きが硬くなっていたり、 空気の通り道が狭くなっていたりすると、 音は途中で弱まり、 届きにくくなる。
伝音性難聴とは、 音が“聞こえない”のではなく、 音が“届きにくい”状態 なのだと思います。
世界の音はそこにある。 でも、耳の奥へ運ぶ小さな橋が 少しだけ揺れている。
その揺れは、 不安を含みながらも、 どこか人間らしい繊細さを映し出しています。
音が遠くなるというのは、 決して世界が遠ざかるのではなく、 身体が「少し休みたい」と そっと伝えているだけなのかもしれません。


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