キッチンの奥で、油がはじける音がしていました。 フライヤーの中で、何かが揚がっています。 その音は、どこか懐かしくて、 でも少しだけ、遠く感じました。
揚げ物をする日は、決まって特別な日でした。 家族が集まる日、誰かの誕生日、 あるいは、ただの金曜日。 でもその“ただの金曜日”が、 なぜか一番記憶に残っているのです。
フライヤーの音は、生活の中の熱の記録です。 ジュワッという音が、 誰かの「おいしい」の予感を運んできて、 部屋の空気が少しだけ変わる。 その変化を、私はずっと好きだったのかもしれません。
でも最近は、 フライヤーの音を聞いても、 「油の処理が面倒だな」とか、 「カロリーが気になるな」とか、 そんなことばかりが先に立ってしまいます。
生活の中の“熱”が、 効率や健康の“冷静さ”に押されてしまう日。 今日は、そんな日だったのかもしれません。
それでも、フライヤーの音は鳴っていました。 誰かが、誰かのために揚げている音です。 その音が、生活の温度を思い出させてくれた記録です。

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