酢という調味料は、 台所の片隅にいつもいるのに、 普段はほとんど出番がありません。
炒め物にもあまり使いませんし、 サラダにも登場しない日が続きます。 気づけば瓶の中の液面は、 ほとんど動かないまま静かに佇んでいます。
けれど、 餃子の日だけは違います。
焼けた皮の香り、 湯気の向こうに見える肉汁の光。 その瞬間だけ、 酢は急に存在感を取り戻します。
醤油よりも、 ラー油よりも、 なぜか酢が一番しっくりくる日があります。
皿に少し垂らすと、 酸味が餃子の熱を受け止め、 油の重さをそっとほどき、 口の中に軽さをつくってくれます。
普段は脇役なのに、 餃子のときだけ主役になる。 そんな調味料がひとつあるだけで、 日常は少しだけ面白くなります。
「酢って、餃子のときに一番減るんだなあ」 その気づきは、 生活の中に潜んでいた小さな物語が ふと姿を見せた瞬間なのかもしれません。


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