無線LAN(Wi‑Fi)は、電波を使って通信するという性質上、 端末同士が「同じ時間の流れ」を共有していないと正常に動作しません。 そのために存在している仕組みが TSF(Timing Synchronization Function)=タイミング同期機能 です。
TSFは、無線LAN端末が内部に持っている 64ビットの“見えない時計” であり、 Wi‑Fiの動作を支える非常に重要な役割を担っています。
TSFとは「1マイクロ秒ごとに進む64ビットの内部時計」です
TSFは、端末が起動した瞬間から動き始める 64ビットのカウンタ です。
- 1マイクロ秒ごとに +1 される
- 64ビットなので、ほぼ無限にカウントできる
- 端末ごとに独立して動作する
- AP(アクセスポイント)と端末はこの時計を基準に同期する
つまりTSFは、 端末固有の時間の流れを示す“指紋”のようなもの です。
MACアドレスよりも、はるかに端末の本質を表す情報と言えます。
TSFはどのフレームに含まれているのか
TSFは、Wi‑Fiの管理フレームに埋め込まれています。
特に:
- Beacon(ビーコン)
- Probe Response
- Association Response
といったフレームにTSFタイムスタンプが含まれ、 アクセスポイントはこれを読み取ることで端末の内部時計を把握します。
TSFが重要な理由:無線LANは「時間」で動いているからです
無線LANの多くの動作は、TSFを基準に制御されています。
- 省電力モードのタイミング
- ビーコンの同期
- フレームの順序管理
- 再送制御
- バックオフアルゴリズム
- セッションの整合性チェック
これらはすべて TSFが正しく動いていること を前提にしています。
そのため、TSFがズレると無線LANは正常に動作できません。
TSFは“端末の指紋”としても利用されています
MACアドレスは偽装できますが、 TSFは端末内部の時計であり、偽装が非常に困難です。
そのためアクセスポイントは、 同じMACアドレスであってもTSFが異なれば、 「これは別の端末である」 と判断できます。
例:
| 端末 | TSF値 |
|---|---|
| 端末A | 1,234,567,890 |
| 端末B | 98,765,432 |
このように、TSFは端末ごとに必ず異なるため、 MACアドレスの重複や偽装があっても、 アクセスポイントは本体を見分けることができます。
TSFが異なると何が起きるのか
同じMACアドレスで別の端末が接続しようとすると、 TSFの値が必ず矛盾します。
アクセスポイントはこの矛盾を検知し、
- 既存のセッションを優先し
- 新しく来たセッションを拒否する
という動作を行います。
そのため、 同じMACアドレスで2台が同時に通信することは不可能 です。
まとめ:TSFは無線LANの“心臓の鼓動”です

TSF(Timing Synchronization Function)は、
- 無線LAN端末が持つ64ビットの内部時計
- 1マイクロ秒単位で進む
- 端末ごとに必ず異なる
- MACアドレスより強力な識別情報
- 無線LANの同期・省電力・順序管理の基盤
- アクセスポイントはTSFを使って端末を見分けている
このように、TSFは無線LANの動作を支える 最も重要な“見えない仕組み” のひとつです。


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