老年期のアルコール依存症は、若い頃のそれとは少し違った姿をしています。 大きな声や乱れた行動ではなく、生活の中に静かに染み込むように進んでいきます。 飲む量が増えたという自覚も薄く、周囲も「昔から飲む人だから」と受け止めてしまう。 その曖昧さが、気づきを遅らせます。
高齢になると、体の代謝は落ち、少量の酒でも影響が大きくなります。 眠れない夜に一杯、食欲がない日に一杯、孤独を埋めるための一杯。 理由はいつも生活の中にあり、特別なものではありません。 けれど、その積み重ねが、気づかないうちに依存の形をつくっていきます。
老年期の依存は、周囲から見えにくいのが特徴です。 仕事を失うわけでもなく、家庭の役割が変わるわけでもない。 生活のリズムがすでにゆっくりしているため、変化が表に出にくいのです。 それでも、転倒が増えたり、薬との飲み合わせが悪化したり、 小さな不調が静かに積み重なっていきます。
依存という言葉は強く聞こえますが、 老年期のそれは、生活の隙間に入り込んだ“習慣の延長”のようなものです。 誰かを責めるための言葉ではなく、 気づきにくい変化をそっと照らすための言葉として扱う必要があります。
老年期のアルコール依存症は、派手ではありません。 けれど、その静けさの中に、長い時間をかけて積み重なった孤独や不安が潜んでいます。 その影に気づくことが、支えの最初の一歩なのだと思います。

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