家の中に、包丁と石が並んでいた。 片方はステンレス、もう片方は河原で拾った丸い石。 どちらも「切る」ことができる。 でも、なぜか「違う時代のもの」として扱われている。
料理のレシピには、包丁が当然のように登場する。 石は登場しない。 そのたびに、ちょっとだけ置いてかれる。
切れ味が違う──それは知ってる。 包丁は鋭く、石は鈍い。 でも、その違いが「文明の進化」として語られる瞬間、 自分の感覚が少しだけ遠くなる。
石器時代は不便だった。 そういうラベルが貼られている気がして、 そのラベルに従って「今の方がいい」と思うことが、 いつの間にか「正しさ」になっていた。
でも今日は、その“正しさ”に体温が乗ってこなかった日。 石を手にしたとき、 「これは昔の道具だ」と思うより先に、 「これは人の手で形づくられたものだ」という“記号”が先に立ってしまった。
包丁は道具、石は記憶。 そう感じた瞬間、 便利さよりも、手触りの境界線が浮かび上がった記録です。


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