裕斗は“耐える力”こそがトレーダーの資質だと信じていた。 ポジションを積むことにためらいはなく、ナンピンを“修正の技術”だと考えていた。
最初のエントリーは軽かった。頭は冴えていた。だがこれは、気まぐれエントリーだった。
そのあと、相場の不安定な動きに呼応するように、少しずつナンピン。
ナンピン5本目、保有画面に“まだいける”という根拠不明の余裕が漂う。 ナンピン10本目、損益は深くなるが、平均レートは理想に近づいている気がする。 ナンピン15本目、口座維持率が警告を始める。チャートは冷たく下がり続けていた。 ナンピン20本目、それはもはや戦略ではなかった。信念という名の逃避行だった。
ロスカットは、静かに行われた。 通知も、警告も、爆音もなかった。 ただ画面が切り替わり、証拠金はゼロに近い数字に変わっていた。
裕斗は椅子に座ったまま、しばらく動かなかった。 けれど、不思議と気持ちは澄んでいた。 怒りも悲しみもなかった。 「終わったんだな」と、思った。
それは、損失の物語ではなかった。 自分が何に期待していたのかを、はじめて正直に見つめる物語だった。
【サイト運営者の感想】
最初が、気まぐれだと、その後計画的に行動するのが難しくなると思います。


HR