きな粉をひとさじすくうと、 その軽さに少し驚くことがあります。 粉というより、 空気の中に溶けかけた何かのようで、 触れた瞬間に輪郭がほどけていく。
大豆を炒って挽いただけの、 とても素朴な食べ物なのに、 その素朴さがどこか“懐かしさ”のような気配をまとっている。 甘さを足せばやさしくなり、 塩を添えれば少しだけ凛とする。 その変化の幅が、きな粉の静かな魅力なのかもしれません。
口に含むと、 粉のままではなく、 舌の上でゆっくりと馴染んでいく。 溶けるというより、 ほどけていくに近い。 そのほどけ方が、 どこか安心を連れてくる。
和菓子にまとわせても、 牛乳に混ぜても、 トーストに振りかけても、 きな粉は主張しすぎない。 ただ、そこにある味を 少しだけ深くしてくれる。
きな粉は、 強い香りでも、 派手な甘さでもなく、 “余白のある味” なのだと思います。 その余白が、 食べる人の記憶や気分をそっと受け止めて、 それぞれのやさしさに変えていく。
粉の軽さと、 大豆の力強さが、 同じ場所に静かに共存している。 その矛盾のような調和が、 きな粉をきな粉たらしめているのかもしれません。
HR