決算書には、現金・売掛金・在庫・借入金・未払金・固定資産など、複数の項目が並びます。 これらは決算書上では独立した数字に見えますが、実際の取引に分解すると、1つの取引が必ず2つ以上の項目を同時に変化させます。
この「複数項目が同時に動く」という性質こそが、複式簿記が考案された理由です。
決算書の項目は、取引に分解すると必ず“複数同時に”動きます
たとえば、売掛金を回収して現金が増えた場合を考えます。
- 現金が増える
- 売掛金が減る
このように、1つの取引で2つの項目が同時に動くのが会計の本質です。
他の取引も同じです。
| 取引 | 動く項目A | 動く項目B |
|---|---|---|
| 売掛金の回収 | 現金↑ | 売掛金↓ |
| 借入金の返済 | 現金↓ | 借入金↓ |
| 在庫の購入 | 現金↓ | 在庫↑ |
| 固定資産の購入 | 現金↓ | 固定資産↑ |
| 未払金の支払い | 現金↓ | 未払金↓ |
どの取引も、必ず2つ以上の項目がセットで動きます。
単式簿記では「現金の動きしか残らない」ため、裏側の動きを自分で判断し直す必要があります
単式簿記は、現金の出入りは記録できますが、 その裏で何が増えたのか・減ったのかまでは残りません。
たとえば、現金が10万円減ったと記録されても、
- 在庫を買ったのか
- 借入金を返したのか
- 未払金を支払ったのか
- 固定資産を買ったのか
理由を自分で判断しないと、決算書の項目に反映できません。
つまり、単式簿記で決算書を作るには、 1年分の取引をすべて見返し、 「この現金の動きはどの項目の増減だったのか」を 手作業で分類し直す必要があります。
これを毎回手作業でやるのは現実的ではありません
決算書は次の関係で成り立っています。
この整合性を保つためには、 すべての取引について、動いた項目Aと項目Bを正しく把握する必要があります。
単式簿記では、
- 現金の動きだけが残り
- 裏側の動きが消えるため
- すべてを後から推測し直す必要がある
これは非常に手間がかかり、ズレが起きやすく、 ズレた原因を探すのも困難です。
そこで考案されたのが「複式簿記」です
複式簿記は、 1つの取引で動く複数の項目を、その場で同時に記録する仕組みです。
- 現金が増えた理由
- 現金が減った理由
- その裏でどの項目が増減したか
これらを自動的に記録するため、 決算書を作るときに整合性が自然に保たれます。
複式簿記は、 「1つの取引が複数の項目を動かす」という会計の本質に対応するために生まれた方法 と言えます。
まとめ

- 決算書の項目(現金・売掛金・在庫・借入金など)は、取引に分解すると必ず複数同時に動く
- 単式簿記では現金の動きしか残らず、裏側の動きを後から判断し直す必要がある
- これを1年分すべて手作業で行うのは現実的ではない
- そこで、複数項目の同時変化をその場で記録できる「複式簿記」が考案された
つまり、複式簿記は 「決算書を作るための便利な道具」ではなく、 “取引が複数項目を同時に動かす”という現実に合わせて生まれた必然的な仕組み なのです。


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