“冷たい水の底で、時間だけがゆっくりと流れている”
サンショウウオという名前を聞くと、 どこか山の奥の、湿った空気が思い浮かびます。 人の気配が届かない沢の石の下で、 ひっそりと暮らしている小さな影。
体は細長く、しっとりとした肌をしていて、 動きは驚くほど静かです。 急がない。 争わない。 ただ、そこにある水と森のリズムに合わせて、 淡々と生きているだけ。
幼いころのサンショウウオは、 外鰓がゆらゆらと揺れています。 赤い羽のようなそのエラは、 水の中で小さな灯りのように見えて、 とても儚いのに、どこか力強い。
日本には多くのサンショウウオがいて、 地域ごとに少しずつ姿を変えながら暮らしています。 山の冷たさ、森の湿度、 その土地の空気をまとったまま、 長い時間を生きてきた生きものたち。
サンショウウオとは、 “自然の奥にある静けさそのもの” なのかもしれません。 触れようとすれば逃げてしまうけれど、 そっと見つめていると、 水の底で確かに息をしている。 そんな名前の生きものです。
HR