簿記を学び始めた頃、資産・負債・純資産・費用・収益という五つの区分は、ただの暗記項目のように見えていました。教科書には「まずはこれを覚えましょう」と書かれていて、覚えることが前提になっている。その圧のようなものが、かえって頭の中に入るのを拒んでいたのかもしれません。
けれど、時間が経ってから同じ言葉を読むと、すっと理解できる瞬間があります。資産は持っているもの、負債は返すもの、純資産はその差額。費用は減る動き、収益は増える動き。意味として自然に入ってくる。以前の自分が拒んでいたのは、言葉そのものではなく、「覚えなければならない」という構えだったのだと気づきます。
簿記の五つの区分は、暗記するための分類ではなく、世界の動きを整理するための枠組みです。お金や物の動きがどこに属するのかを、静かに置き分けるための器のようなもの。意味がつながった瞬間、その器の形が自然に見えてくる。覚えるというより、理解が勝手に定着していく感覚に近いのだと思います。
学びの中には、時間を置かないと入ってこない言葉があります。拒んでいたのは自分ではなく、まだ意味が結びついていなかっただけ。そう気づくと、以前の自分も今の自分も、どちらも自然な姿に思えてきます。
HR