釧路湿原について調べていました。 地図を眺めながら湿原の広さを追いかけ、 どこに水が溜まり、どこに森が沈んでいるのかを見ていました。
その途中で、 「キタサンショウウオ」という名前が目に入りました。
湿原の片隅に、 こんな生きものがひっそりと暮らしていることを知りました。
釧路の風景を見ているだけでは気づかない、 もうひとつの層がそこにあるように感じました。
キタサンショウウオとは
キタサンショウウオ(Salamandrella keyserlingii)とは、北海道の釧路湿原と上士幌町にのみ生息する希少なサンショウウオです。 ロシア・モンゴル・サハリンなどユーラシア北部にも広く分布し、日本産サンショウウオで唯一国外にも分布する種として知られています。
背中に黄色い縦帯が走るのが特徴で、寒冷環境への耐性が非常に強く、体が一時的に凍結しても生存できる特異な性質を持っています。
形態と特徴
- 全長 は12〜16cmほどの小型種です。
- 体色 は暗褐色で、背面に黄色い縦帯が走ります。
- 指の本数 は前肢・後肢ともに4本で、日本のサンショウウオでは珍しい特徴です。
- 卵嚢 は透明でバナナ状をしており、光を浴びると青白く発光します。
生息環境
キタサンショウウオは湿原の止水域で繁殖し、成体は周辺の林床で生活します。 北海道では釧路湿原と上士幌町のごく限られた地域にのみ生息し、国内の生息地は30か所ほどとされています。
海外ではシベリア・サハリン・モンゴルなど広範囲に分布し、 両生類の中で世界最大級の自然分布域を持つ種です。
生態
- 産卵期 は4〜5月です。
- 卵数 は1対の卵嚢に約140〜300個です。
- 孵化 は約30〜40日で進みます。
- 食性 は昆虫・クモ・ミミズなどです。
- 耐寒性 は非常に高く、−23℃でも数日間生存できます。
保全状況
キタサンショウウオは環境省レッドリストで絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されています。 釧路市・標茶町・上士幌町では天然記念物として保護されています。
しかし、生息地の約3分の2が保護区外にあり、 宅地開発・農地化・太陽光発電施設の建設などによって繁殖地が失われつつあります。
まとめ

キタサンショウウオは、 北海道の湿原にひっそりと生きる希少な有尾類であり、 極寒に耐える特異な生態と美しい卵嚢を持つ、生態学的価値の高い生物です。
釧路湿原を調べていて偶然出会ったこの名前は、 湿原の奥にもうひとつの静かな世界があることを教えてくれます。
