近年、RPA(Robotic Process Automation)の導入事例を見かける機会が増えました。
「年間○万時間削減」
「人件費を大幅に削減」
「月間○百時間の工数削減」
こうした言葉を見ると、RPAは企業の救世主のようにも見えます。
確かに、人がやらなくてもよい単純作業を自動化すること自体は悪いことではありません。
しかし私は、こうした成功事例を見るたびに別のことが気になります。
そもそも、そんなに減らせる仕事がなぜ存在していたのでしょうか。
削減できることと必要なことは違う
RPAの導入対象になる業務を見ると、多くは似たようなものです。
- システム間の転記作業
- 定型レポートの作成
- データ照合
- 各種集計
- メール送信
確かに自動化しやすい業務です。
しかし見方を変えれば、人間が機械の代わりをしていただけとも言えます。
本来であればシステム同士が連携していれば済む話なのに、人が情報をコピーし、貼り付け、確認し、報告する。
その作業が何年も続いた結果として、RPAによる削減効果が大きく見えているだけかもしれません。
仕事は意外と簡単に増える
会社の仕事は不思議なもので、増える理由はたくさんあります。
ミスがあったから確認を増やす。
トラブルが起きたから報告書を作る。
監査のために記録を残す。
念のためチェックを追加する。
こうして一つひとつは合理的に見える作業が積み重なっていきます。
ところが、それらを後から減らそうとする人はほとんどいません。
結果として、本来なら不要になっている業務まで残り続けます。
気がついたときには、誰も理由を説明できない仕事が大量に存在する状態になっています。
自動化は改善ではなく後処理のこともある
RPA導入によって月100時間の作業を削減できた。
これは確かに成果です。
しかし、その100時間の作業が本当に必要だったのかは別問題です。
もし誰も目的を説明できない業務だったなら、自動化すべきだったのではなく廃止すべきだった可能性があります。
不要な仕事にロボットを投入しても、無駄を高速処理しているだけです。
もちろん担当者は楽になります。
ただし組織全体としては、本質的な問題を先送りしているだけかもしれません。
本当に難しいのは仕事を消すこと
業務改善というと、多くの人は効率化を考えます。
ですが、本当に効果が大きいのは業務そのものをなくすことです。
入力作業を自動化する前に入力をなくせないか。
レポートを自動生成する前にレポートが必要か。
承認フローを整備する前に承認そのものを減らせないか。
こうした問いは、RPA導入よりもずっと難しい作業です。
なぜなら業務をなくすことは、過去の慣習や組織文化に踏み込むことになるからです。
しかし、本来の改善とはそういうものではないでしょうか。
まとめ

RPAは便利な技術です。
人が単純作業から解放されることには大きな価値があります。
しかし、RPAによって何時間削減できたかよりも、その仕事がなぜ存在していたのかを考える方が重要です。
業務改善の目的は、自動化することではありません。
本当に必要な仕事だけを残し、それ以外を減らしていくことです。
「この仕事をロボットにやらせよう」
その前に、
「そもそも、その仕事は必要なのだろうか」
という問いを持つことが、本当の意味での業務改善の第一歩なのかもしれません。
