ハマグリとアサリは、どちらも二枚貝という括りでありながら、どこか対極にあるような佇まいを持っています。
浅い砂地に群れて育つアサリは、強い主張を持っています。水に潜らせて火を通すと、濃厚なコハク酸がスープ全体に行き渡り、料理の主役を引き受けるような力強さを見せる。パスタや味噌汁の奥で、はっきりとした存在感を残します。
一方で、深めの砂底で時間をかけて大きくなるハマグリは、どこか澄んだ佇まいを崩しません。
身の内にたくわえた甘みと上品な旨味は、主張するというより、湯の中にそっと溶け出していく。出汁は白く柔らかく濁り、お吸い物の椀の底で、静かに自分の場所を守っています。
力強く全体を引っ張るアサリと、空間そのものをやわらかく満たすハマグリ。
同じ海で生まれながら、料理の中で果たす役割の余白は、それぞれの生きてきた深さの違いから生まれているのかもしれません。